21世紀の日本人の生活フィットネス |
貯筋運動(ちょきんうんどう) 中高年で運動不足の人に対して、早稲田大学大学院教授、現 鹿屋体育大学学長の 福永哲夫氏が唱えている、筋肉を鍛える事で 健康を保とうというキャンペーン、つまり毎日15分程度の運動を継続して行い、ふだん使っていない 部分の筋肉を鍛えておくことに酔って老後に供えようというもの、 日頃、余り運動をしていない中高年なので、福永氏は運動を始めるにあたって次のような注意が 必要としています。 1)運動の前にストレッチ体操を行う 2)少しきついかなという強度を選ぶ 3)どの筋肉を動かしているのか意識する 4)出来るようになったらレベルをあげるなど。 詳しくは 貯筋通帳 改訂版 ワニマガジン社外部リンク 貯筋通帳&記録帳 (株)早稲田エルダリーヘルス事業団外部リンク |
身体教養の(提案)すすめ 2003年3月 東京大学退官記念講演 敬称略 |
東京大学大学院生命環境科系教授 福永哲夫 |
人間として教養のある質の高い生活(QOLの向上)を実現することは年齢に関わらず 万人の望むところである。そのためには、身体運動を生み出す諸機能を一定水準以上保持し 低ルことが必須条件となる。あらゆる身体活動は、筋ー骨格系、呼吸循環系、及び神経系の 正常な機能発揮なくしては達成されない。 |
一方、身体諸機能は加齢とともに低下する傾向を示す。もちろん人間が生物である以上 老化現象は避けられないが、老化に運動不足が加わることで機能低下をますます加速させて しているのである。しかも豊かで機械化された便利な現代社会では、日常生活において身体を 活発に働かせる機会をきわめて少なくする方向にあり、このような状況下で長く生活していると 正常な身体活動を保持し続けられなくなある可能性が高い。このような社会現象を考えるに、 高齢者が健康で活動的である様にする対策を考えることは緊急且つ重要な研究テーマであろう その為には、加齢に伴う筋骨格系、呼吸循環系、及び神経機能の変化を詳細に分析するととも に、高齢者に対する身体運動の影響を明らかにしておかなければならない。 健康で活発な日常生活を遂行する為には生活環境に適応できる身体能力が必要である(この 能力を総称っして「生活フィットネス」と呼ぶ事にする)。「生活filtutonesu」は加齢と共に低下するが、そ の低下パターンに個人差が大きい。 |
平均的な生活を送っている場合と比較して、日常活発な身体活動を実施している場合 には「生活フィットネス」は高い水準を維持する事が出来る。一方、運動不足状態が続くと「生活フィッ トネス」が低下し、また、病気などをきっかけにして急激な「生活フィットネス」の低下が観察される。 「生活フィットネス」の中でも特に重要な要素に脚の筋機能がある。脚筋機能の低下は「歩く」「階段 を昇る」「立ったり座ったりする」といった日常生活動作の遂行に支障を来たし、関節への負担を 増やし、ちょっとしたバランスの崩れを修正できず転倒の危険性を高める。加えて、身体不活動は 骨量の低下をも引き起こすので、骨折しやすくなり、ひいては寝たきり状態をもたらすことにもなり かねない。 |
正常な日常生活が維持できなくなる機能水準(仮に「寝たきりフィットネス」と呼ぶことにする」 に近づく事は生活能力に余裕が無くなる事を意味する。高齢者にとって「自立して生活できるだけ の身体能力があればそれ以上の体力は不要である」よの意見も聞く、しかし、病気ではなくとも 「寝たきりフィットネス」に近い状態で生活する事は病気になった場合(例えば、風邪をひく、骨折をす る等)の安静状態(身体不活動)がもたらすフィットネスの低下は「寝たきりフィットネス」を簡単に達成す る事(脚筋機能低下)になり、その結果、病気は治ったけれども「歩けない」→「寝たきり」と云った 状態を引き起こすことになる。一方、高水準の「生活フィットネス」所有者は病気などの状態になったと しても「寝たきりフィットネス」まで時間を稼ぐことが出来、充分に回復する為の時間的余裕を有 する事が出来る。 いざと云う時の為の「貯金」と同じく、日頃高い「生活フィットネス」を保障する身体諸機能を 貯えておく事「貯筋」が必要である。 |
加齢は身体能力の著しい低下を招く。一方で、日常生活環境により身体能力は強く影響 される。この毎日の変化を反映した結果であると考えられる。この事は、生活環境をコントロールす ることにより身体を意図する様に変化させられることを意味する。自分の身体に関する情報を正しく 把握し、理想とする身体を創造するために¥の知恵と努力が求められる。 教養とは「単なる学殖、多識とは異なり、一定の文化的理想を体得し、それによって個人が身につ けた創造的な理解力や知識」(広辞苑)とある、文化的理想は時代、民族などにより異なるが、その 理想に向かって自己を創り上げていく過程は人間らしい生活の基本を形成するものである。 自己の身体を正しく理解し、望ましい身体を創造すること(「身体教養」と呼ぶ)は年齢や男女に関 わらず文化的な生活を遂行する為の必要不可欠な要素であろう。スポーツ実施の動機や目的と して、競技(競技スポーツ)健康(健康スポーツ)が取り上げられるが、加えて「教養」(教養スポー ツ)も最も大切なスポーツ実施の目的として考えなければならない。「身体教養」お意識して運 動を実施することは「教養スポーツ」と言える。 |
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